2012年01月13日
寒中お見舞い申し上げます。
早いもので、尾崎呉服店は新店舗で営業を始めて足掛け3年目の年を迎えました。
2012年も皆様の美しい着物生活のお手伝いをしてまいりたく存じます。
ご挨拶が遅くなりましたが、どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
昨年のことですが、尾崎呉服店の店舗建築に関して、新たに2つの賞を受賞いたしましたことをご報告いたします。
まず、"第10回芦原義信賞"奨励賞を、設計を手がけていただいた竹中工務店広島支店設計部の門谷和雄氏、秦敏彦氏のお二人が受賞なさいました。
最優秀賞に当たる"芦原義信賞"は、このたび該当作品なしということで、優秀賞1作と奨励賞2作の計3作品が受賞しました。
今回の奨励賞は尾崎呉服店の店舗と、隣接する尾崎邸の両建築に対しての受賞です。
建築物そのものだけでなく、それを取り巻く環境や文化、コンセプトも評価対象とされました。
尾崎呉服店と尾崎邸は、既存の伝統的な日本家屋と斬新な現代建築を対比させ、老舗呉服店として新たな出発を果たした点が評価されての受賞です。
過去に受賞した際に何度かご紹介しましたので、簡単に受賞建築をご紹介します。
尾崎呉服店店舗兼社屋(左)と尾崎邸(右)
店舗入口の正面から見た外観です。
呉服店、質店、アートスペースという全く異なるジャンルで形成される三層構造の建築を貫く階段です。
3階のアートスペース"gridⅠ"です。
現代美術や着物、山陰に関する独自の企画展を展開しています。
同じく3階の"gridⅡ"です。
尾崎家13代目、洋画家として知られる尾崎悌之助が遺した作品を常設展示しています。
そして、同時に受賞した尾崎邸の内部がこちらです。
尾崎邸リビングダイニング。
"grid"の企画展出品作家や遠方からのお客様にお泊りいただくゲストルームです。
採光にグリッド構造のガラスブロックを使った書斎です。
尾崎邸は随所に旧家屋の建材が活かされ、現代的ななかにも伝統と歴史を感じられる構造になっています。
店舗、住居を通じて、「グリッド(格子)」状の構造がテーマとなっており、異なる空間を内包するそれぞれの建築物が統一感をもって存在することに重点が置かれました。
さらに、全国の優れたサインデザインに対して贈られる"第45回SDA賞"空間・環境表現サイン部門において、尾崎呉服店のショウウインドウを中心とした空間デザインが入選いたしました。
尾崎呉服店入り口横の、印象的なモアレ調で表現された部分は、尾崎悌之助が描いた七宝つなぎの意匠をモチーフにしています。
この七宝つなぎ文様は、長らく尾崎呉服店のメインイメージとして包装紙や紙袋に使用されてきたものですが、2010年の新店舗建築にともない、店舗の顔とも言える正面ウインドウにこの意匠を大胆に採り入れました。
尾崎呉服店ショウウインドウです。
(ここまで 写真撮影:古川泰造)
商品をディスプレイする横長のウインドウを囲むガラスのモアレ構造は尾崎悌之助の筆による七宝つなぎ文様をモチーフとしています。
尾崎呉服店のショッピングバッグや包装紙にも、この七宝つなぎ文様が施されています。
小物をお買い上げの際にお渡しする小さなサイズの紙袋は季節に応じて4色をご用意しております。
また、尾崎呉服店オリジナル商品にもこの意匠が活かされています。
因州和紙を使用したオリジナルレターセット。
オリジナル手ぬぐい。
尾崎呉服店新店舗は昨年より何度か賞を受賞していますが、
思いを込めて創り上げた建物と頂いた賞に恥じることのない呉服店であるよう、スタッフ一同努めてまいりたいと思っております。
過去の受賞のお知らせは
尾崎呉服店では、新年1月4日(水)から1月29日(日)まで
"フォーマルの着物特集"を開催しております。
これからの卒業、入学シーズンへ向けて、ご自分らしい晴れの装いをお探しください。
皆様のご来店をお待ち申し上げております。
投稿者|前田
2011年09月18日
ブログをご覧の皆様にお知らせです。
2010年10月10日に新築オープンした尾崎呉服店の店舗を含む株式会社小田屋尾崎の社屋と、隣接する尾崎家住宅の建築で、両建築作品の設計を手がけていただいた竹中工務店広島支店の門谷和雄氏と秦敏彦氏が、
平成23年 日本建築士会連合会賞の最高賞である「優秀賞」を受賞されることになりました。
日本全国の建築作品の中から、審査を経て毎年5作品程度が入賞するこの賞。規模の大小に関わらず、その建築の技術、有用性、地域との関わり、コンセプトなど幅広い観点から評価され、かつ美しい建築物に贈られる賞ということです。
尾崎家住宅は新社屋に先駆けて2006年に竣工した建物です。尾崎家住宅新築を通して信頼関係を築いた門谷氏、秦氏に2010年の新社屋設計もお願いしました。
その間、幾度となく重ねられた綿密なミーティングが建築作品となって結実し、今回の受賞につながったことを大変嬉しく感じております。
向かって左が社屋で、1階が尾崎呉服店、2階が尾崎質店、3階がアートスペース"grid"という3層構造になっております。
向かって右が尾崎家住宅で、通りに面したガラスブロックの採光は新社屋3階のアートスペースの名称になった"grid"(格子)を表現しています。
それでは、簡単に各部をご紹介いたします。
社屋1階、尾崎呉服店 店内です。
従来の呉服店のイメージからの脱却を図り、洗練された大人のお洒落をご提案する明るく開放的な空間になっています。
社屋の1階から3階までを貫く印象的な階段。
この吹き抜けが、異なる3つのジャンルを同じ空間に共存させる核の役割を果たします。
社屋2階の尾崎質店のお預りカウンターです。
明るく現代的な店内で、お客様のプライバシーにも配慮した構造になっております。
社屋3階アートスペース"gridⅠ"。
現代美術、着物、山陰などをキーワードに企画展やイベントを開催します。
社屋3階アートスペース"gridⅡ"。
尾崎家13代で、洋画家として知られる尾崎悌之助(1910-1986)が遺した作品を常時展示しております。
ここからは同時に受賞した尾崎家住宅も少しご紹介いたします。
冒頭の外観写真で一面グリッド状の採光が施されていた書斎の内部です。
1階から3階までの吹き抜けの構造になっており、壁一面が書棚になっています。
北側(写真左)の書棚に本を収納していくことで、屋内から漏れる光が変化し、夜間の外観の表情を変えていきます。
ゲストルームです。
旧尾崎家住宅の欄間や障子の桟などが効果的に活かされています。
鳥取の地で15代にわたり商いを続ける尾崎家の歴史を、宿泊されるお客様に感じていただけるように工夫されています。
アートスペース"grid"の出品作家や美術関係者の方々がご来鳥の折にご利用いただく機会が多い一室です。
個人宅の内部は普段お目にかけることはできませんが、
社屋の建物は営業時間内はいつでもご覧いただけます。
ぜひ、空間を味わいにお出かけください。
尾崎呉服店セレクトの商品とともに、そこから私たちの求めている「理想」を少しでも感じていただけましたら幸いです。
以前、同建築で、設計の秦敏彦氏が竹中工務店の2010年度設計技術賞を受賞したお知らせの際に店内の様子などをご紹介したブログも是非ご覧ください。
↓
小田屋尾崎新社屋・店舗建築が受賞しました
(写真撮影:古川泰造)
投稿者|前田
2011年04月12日
尾崎呉服店近くの旧袋川沿いの桜並木も満開です。
新しいスタートの季節がやってきましたね。
先日、尾崎呉服店に嬉しい知らせが届きました。
昨年2010年10月10日に社屋兼店舗を新築オープンした当店ですが、
設計をお願いした竹中工務店広島支店設計部の秦敏彦氏が、株式会社小田屋尾崎の新社屋・店舗建築で、竹中工務店の2010年度設計技術賞を受賞なさったということです。
HP上で店舗の写真をあまり使っておりませんので、この機会に、少し店内をご紹介差し上げようと思います。
まずこちらが社屋兼店舗の外観です。
横長の独特のショウウインドウのある1階が尾崎呉服店、
2階が尾崎質店、
3階がgridという、三層構造の建物です。
呉服店のショウウインドウを縁取るモアレ構造の意匠は、尾崎家13代目の洋画家・尾崎悌之助が描いた七宝つなぎ文様です。
右側が尾崎呉服店の入口、左側が尾崎質店のショウウインドウと2階へ続く階段の入口です。
1階正面入口を入っていただくと、左手には着物と帯や、伊と忠の履物コーナーがあります。
対する店舗右側には、和装小物、尾崎呉服店オリジナル商品などのコーナーがあります。
1階から3階までを貫く明るい吹き抜けを階段で上っていただきます。
従来の呉服店とは違い、売り場に畳敷きの間を設けておりませんが、店舗の奥には既存の母屋の和室を利用した試着室をご用意しました。
1階から3階までを貫く印象的な階段は、この建築の核となるデザインです。
2階へ上がってすぐ左側に質店の売り場が見えます。
売り場奥の扉を入ると、お預かりや買取の受付カウンターです。
鳥取一の老舗としてご愛顧いただいている尾崎質店。
新築で店の雰囲気は一新しましたが、シンボルだった帳場の衝立を旧店舗から受け継ぎました。
路面から2階の尾崎質店へ直接上がっていただける階段もあります。
3階はアートスペースgridです。
二部屋あるうち、こちらはgridⅠ。
現代美術や着物に関する様々な企画展を開催します。
グリッド(格子)状のガラスブロックの採光が印象的なgridⅡは洋画家・尾崎悌之助の作品を展示する一室です。
彼の描いた七宝模様が、当店を象徴する意匠として、建築やオリジナル商品、ロゴマークなど、随所に生かされました。
gridⅠ、gridⅡは、それぞれの室内から双方の展示や下階の様子などがうかがえる構造になっています。
異なるジャンルが三層に分かれた建物ですが、建築内の空間は一体と感じられるような工夫がいたるところに施されています。
江戸時代以前より続く長い歴史を持つ当店。
老舗としてのプライドを持ちつつも、それに驕らず常に革新的、挑戦的であろうとする姿勢を反映した建築です。
幾度もミーティングを重ね、設計・施工サイドとイメージを共有していきながら創りあげました。
この空間は、お客様お一人お一人がじっくりと着物やアートと対話していただくことで、本当の完成を見ます。
皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
(写真撮影:古川泰造)
投稿者|前田
以前の尾崎呉服店の建築