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封印された時間:天羽やよい作 南部菱刺し名古屋帯

2019年12月04日

皆様、こんにちは。
鳥取の尾﨑呉服店です。

 

クリスマスや新年を前に浮き浮きと心躍る季節がやってきました。街は煌びやかなイルミネーションに彩られ、人々は足早に家路へと向かいます。そんな気忙しい12月の鳥取に、素敵な手仕事の帯が届きました。

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天羽やよい作  南部菱刺し九寸帯 黒地  幾何学模様  *価格はお問合せ下さいませ。

 

黒色の麻地の上に生成色の緻密な幾何学模様が浮かび上がっています。一見して誰もが想像を絶する精緻な仕事に息をのむこの刺し子の帯は、青森県八戸市在住の南部菱刺しの作家・天羽やよいの作品です。

津軽こぎん刺し、山形の庄内刺し子と並び「日本三大刺し子」と称される南部菱刺しは、かつて南部藩の所領だった青森県の東部、現八戸市を中心に住む農民によって脈々と受け継がれた農閑期の手仕事でした。いずれの刺し子も江戸時代から伝わる伝統技術で、豪雪地帯であるにもかかわらず当時は麻の衣服しか纏うことのできなかった農家の女性によって、麻布の補強と保温性を図る工夫から生み出された庶民の知恵でした。

東京生まれの天羽やよいは、結婚を機に八戸に移住。東北地方の民具や野良着の収集で知られる在野の民俗学者・田中忠三郎の南部菱刺しを紹介する本と運命的な出会いを果たし、明治の終わり頃から衰退していた南部菱刺しの復活を目指します。1977年頃より独学で南部菱刺しの帯の制作に取り組み、現在、南部菱刺しを代表する染織作家として全国的に高い評価を受けています。近年の活動としては、十和田市現代美術館で開催された「田中忠三郎が伝える精神」展に、数名の現代美術作家とともに天羽やよいも参加したことが記憶に新しいところです。

写真の帯では、天羽自身が織り上げた黒のリネン地に、自宅付近の野原や林で収集した草木で染めた木綿糸を用いて、一針一針、びっしりと覆いつくすように菱刺し文様が表現されています。南部菱刺しの伝統を踏まえつつ、独自のセンスでモダンに味付けされた彼女のデザインは、一瞬にして見る者を魅了します。また、スカンジナビア半島のフォークロア刺繍に通じる素朴さと、同時に北欧のテキスタイルを思わせる斬新さも持ち合わせており、「伝統工芸」と身構えることなく若い方でも親しみやすい側面もあります。

天羽の帯はもちろん、耐久性や防寒性を高めるための技術という実用性から解き放たれた現代の南部菱刺しの帯です。しかしながら、気の遠くなるような刺し子の作業時間が布に定着されていることで、東北の長い冬が封印されたような印象を与えます。刺し子の歴史的な背景を考えてみても、麻地の帯ではありますが夏よりも冬に相応しく、冬に締めてこそ南部菱刺しの魅力が最大限に引き出されるように思います。また、これから極寒の時季を迎えるにあたり合わせる着物は、ほっこりとした真綿の結城が最適でしょう。天羽さんの帯が紹介されているミセス最新号の清野恵理子さんの着物のページでも、麻の葉文様の結城紬の着物とコーディネートされています。全工程が手仕事の天羽の帯と地機の結城紬の着物。これ以上のない究極の組み合わせで、冬を心豊かに過ごされませんか?

 

 

 

 

*当店では積極的なネット販売を致しておりませんが、電話やメールでご連絡をいただき、ご注文を承ることは可能です。気になられる商品がございましたら、お気軽にお尋ねくださいませ。

 

 

 

*12月の定休日と年末年始休業のお知らせ

定休日・・・12月18日(水)

年末年始休業 2019年12月31日(火)~2020年1月3日(金)

*12月30日(月)は17時までの営業です。

(通常は18時まで営業しております)

ご迷惑をおかけしますが、どうぞ宜しくお願いします。

  

 

 

 

 

 


 

カテゴリー|新商品

投稿者|呉服スタッフ

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